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社会福祉法人 しいのみ学園

曻地 三郎 先生の教え

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しいのみ学園の療育

●温かい愛情と厳しい研究(児童中心主義に立った発達支援)

●感性(心)の教育
子どもは、親や先生からの愛情と、相互の信頼関係によって、より人間的に育っていく

●体を治療して、精神(心)を教育するしいのみの療育は、教育の特性が大きい。
「-を0にかえるものが医療・福祉である/0を+にかえるものが教育である」

十大教育原理

(1)活動の原理

障害をもっている子どもたちは自発的に遊ぶことをしたがらない傾向がある。親や指導者の指示した受け身的な遊びでは、子どもの心身の発達を促す活動にはならない。障害が軽度であれ重度であれ、子どもたちに自分自身を活動源とした主体的活動を経験させなければならない。

母子分離をし、母親から独立し、子ども自身の発想により独創的な活動をさせ、外界への積極的な働きかけをさせるとき、子どもは生き生きとし、予想しなかった能力を発揮することがある。子どもをじっとさせておいてはいけない。子どもは活動を通して新しい体験をする。子どもたちは試行錯誤によって体験を拡充していくのである。親や兄弟から離れて、遊び仲間、友人、隣人、社会人というように活動範囲を広げていくべきである。

(2)興味の原理

子どもたちの教育の出発点は活動である。それを誘発するのは子どもの興味である。子どもたちは何に興味を持つかをよく観察しなければならない。

子どもの生活場面には、誘因性をもっていて積極的に子どもの心をひきつけるものがある。そして子どもの内心には、対象に注意を向ける自発的自主的な力がある。障害を気にしたりしないで、興味あるものに対して注意を向け、没頭する態度をつくることが重要である。

子どもの興味、関心を喚起し、注意を持続させる学習効果を上げるための補助教材、補助教具を作って、子どもが何に興味があるかを見て子どもの活動性を刺激して、興味を引き出すことが大切である。

その意味からすれば、何でもまず子どもの好きなことをやらせてみることである。

(3)許容の原理

許容的態度を示す具体的な方法としては、「まず笑顔」で子どもに接することである。そして「ことばかけをする」ことである。

親や教師が、子どもに対して、禁止と命令を出していては子どもは伸びていかない。指導者とか教育者という態度ではなく、発達支援者・援助者という態度で、子どもの言うことを聞いてやることである。受入れてもらえると信頼を生じる。

障害児の教育にあたっては叱らない教育が必要である。伸び伸びとした明るい表情の子に育てなければならない。時には過剰行動をすることもあるが、見逃してやることも子どもの成長過程では必要なことである。

(4)賞賛の原理

障害をもっている子どもは、不安、過敏、恐怖などにより自分の行為に対して、不安感を抱き、自信喪失に陥っている者が多いが、教師や親などから賞賛されると喜びを感じ、積極的に何かしようとする意識転換をすることが多い。

賞賛には、黙認、承認、賞賛の3段階がある。子どもの行動が自発的行動であった場合、その内容が、いくらか良くないことであっても自分からやろうという意欲を尊重する立場にたち、内容にこだわらずその態度を賞賛することが大切である。

褒めてられていやな感じをする者は一人もない。褒められると何かやろうという意欲をもってくる。積極性を生んでくる。よい教師とは褒める点を見つける態度をもち、褒めて子どもを伸ばす人のことである。子どもは叱るよりも褒め、辱めるよりも励ましてやることである。

(5)自信の原理

障害をもっている子どもは、自分の行動に対して自信ももちづらく、何かしようとすると、まず最初にそれが自分にできるかどうかという不安感情が表れ、着手しても不安感情が出てきて途中でとめてしまうことが多い。完成の喜びを感じることなしに中途半端に終わってはいけない。

自信喪失の子どもに対して、心配するな、自信を持て、がんばれということばをかけて、如何に激励してもことばでは自信は出てこない。容易な事柄の完成による体験をさせて少しでもよくできたら賞賛して自信をつけさせてやることである。

子どもにできる仕事や役割を与え、たとえ小さなことでも、1つのことを自分の意思でそして自分の力で成し遂げたという実感は、子どもの自信を強める大きな原動力になるものである。

(6)予見の原理

医学で重要視されてきたことは前駆症状をとらえることである。心理学の分野でも子どもの行動を予見することが大切である。障害児の行動は個々によって違うので、行動を予測することがなかなか難しい。しかし、行動によっては、かなりの法則性があって、かえって予見が可能なものもある。

子どもの行動には、よく観察してみると、ちゃんと予測できることが少なくない。催便、腹痛、発作、空腹、渇水、発熱、発病などの生理的な現象をはじめ、けんか、いじめ、反抗、火遊び、虚言、投石、ガラスの破損、窃盗、逃亡、脱走、などについても予見することができることがある。子どもの行動を予見し、先手を打って「先手必勝法」で行けば子どもを叱ったり処罰することは要らない。

(7)変化の原理

障害のある子どもの生活は単調になりやすいので、生活に変化を与えることが必要である。変化の方法としては、環境的変化すなわち空間的変化と時間的変化とがある。家庭にばかり閉じこもらずに、外に連れて行ったり、学校生活でも運動会とか学芸会とか遠足など

の行事にできるだけ参加するようにする。子どもは、こうした変った場所に行き、違った人に接することによって、その適切な対処の仕方を学ぶことができる。生活のマンネリズム化を避け、日に日に新たにしていこう。

子どもはいつもと違った状態に置かれると、予想しなかったことをし子どもたちの隠れた能力を発揮することがある。「子どもを見直す」ことがしばしばである。子どもを変化した状態に置き、さらには親や指導者の心をも変化させねばならない。

(8)集中の原理

注意散漫で困るという子どもについてよく観察してみると指導者が「それをしてはいけない」「あれはダメだ」というように、何かと口出しして、子どもが何かに熱中しようとしても、それができないようにしていることがある。

勉強となるとすぐに飽きっぽくて困る、とよく言われる。本当に遊びに熱中する能力があれば、勉強にも熱中する能力があるはずである。勉強の仕方と材料をそろえてやればよい。ここぞと思ったら時間を超越して、ぐんぐん集中してやればよい。

自分の目指すところに向かって、取り込む態度をつくり、注意散漫でなくても、真正面から立ち向かう姿勢が重要である。「集中は力なり」「継続は力なり」を念頭におき完成する喜びを感じるようになれば、注意の集中ができるようになる。

(9)共在の原理

共在とは指導者と子どもとが、いつも一緒にいることである。教育の始まりは、共に知り合うことである。親しくなることである。人間関係を深めていくためには、まず空間的にお互いが接近することである。愛情は接近によって生じ、共にあることによってさらに育まれていくのである。

援助者は何と言っても子どもの状態を知らなければならない。知るためには、直接子どもに接し、子どもたちと話し、一緒に行動することである。子どもが何を要求しているのか、子どもの発達の程度はどうなのか、子どもの生活の状態はどうなのか、ということは子どもと一緒にいることによって理解されてくる。子どもと共在・共進・共学しよう。

(10)体感の原理

愛情はスキンシップにより生じるものである。子どもに対する愛情は身体的なものを通じて伝わり深められていく。子どもの頭をさすったり、握手すること、子どもの鼻を拭いたり、爪を切ってやること、お尻を拭いたりしてやることを通して、相互に親密度を深めていくものである。このようにスキンシップが心理的接触を促していく。挨拶のときに、ことばをかける以上に、握手するほうが、親密感を味わうことができることを日常生活でも体感しているであろう。

障害児は特に体感が敏感であるので、この体感により親和度を深め、体感による信頼度を深めていくことは重要である。
(2005年 曻地勝人・曻地三郎 編『障害幼児の理解と支援』ナカニシヤ出版より)

教材による感覚訓練

●手は外にある大脳である(大脳在外説)
●「見る・聴く・触る」が基本である

→教材で味覚・嗅覚・触覚・視覚・聴覚・運動感覚を喚起する
→子どもは遊んでいる/先生は教えている「遊び学ぶ」

教材製作の十大原理

(1)目的性
はっきりして分かりやすいこと
(2)児童性
子ども中心であること
(3)誘意性
意志を引き出すこと
(4)単純性
扱いが容易で、直ぐに結果が出ること
(5)発展性
次につながっていくこと
(6)発想性
思いつき・閃くこと
(7)基準性
長さや量などの単位性があること
(8)堅牢性
ある程度丈夫なこと
(9)安全性
危くないこと
(10)経済性
安価・短時間でできること

(2002年 曻地三郎 著『廃物利用教材・教具の作製と使用法』第6集より)

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